Bastardize your eyes 創造と制作、おのずと内から湧き上がってくるもの、刺激を受けてはじめておこされるもの、ビート制作のあれこれ
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SHINJI-coo-K's Diary

Bastardize your eyes

創造と制作、おのずと内から湧き上がってくるもの、刺激を受けてはじめておこされるもの、ビート制作のあれこれ

ビートメーカー、いわゆるヒップホップジャンルのトラック(ヒップホップではビートともいうことが多い)制作は良くも悪くも俗なもの、ラフなものというか、ドライなもの、だと思わされることがある。というのもどういう感情で作ったビートであれ、そこに言葉を載せるのはラッパーの裁量だし、ビートメイカーが“メロディ、リズム、音色、その3種以外での表現”で作った、込めた気持ちを伝えるという行為はなかなかない。なぜならラッパーの表現を制限するかもしれない無粋な真似はちょっとできないからだ。
そしてそのビートはたとえれば喪失の悲しみで作ったとしても野蛮な言葉や差別用語が飛び交う楽曲に仕上がる可能性があり、かつ、お金に変わる。ビートの売買が当たり前の世界だから換金しやすく、しかし自分の心にはなかった表現の楽曲として世に出ることはままある。だから良くも悪くも俗なもの、と捉えたりラフに作ったりドライにやり取りした方が楽にやっていける、そう思わされることがある。

しかしこれは、“ラッパーと密にやり取りをかわさない制作”の話で、という但し書きが付く、というのをいまさらながら書いて考え及んだので、ここまで読んでくれたあなたに耳打ちで共有するようにこの段落に書いておこう。


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近年ヒップホップの世界ではビートメイキングにおいて特定のラッパーが使用しているトラックの雰囲気を踏襲したものが意図的に作られるようになった。これを「タイプビート」といい、たとえばエミネムタイプビート、あるいはドレイクタイプビートといった風に模作する文化が生まれている。
ヒップホップはフリースタイルラップにも代表されるようラッパーの即座のひらめきにもなるべく早く応えられるようトラックを届けること、たとえばわざわざ楽器屋にも行かずサンプリングを多用して制作する側面があるように「さっそく作るべく技法」が磨かれている。だからタイプビートも必然的に生まれた文化なのだろうし、作ることを求められたときになるべく早く応えるには既存のラッパー既存のビートをカタログだと解釈してそこから選んで作った方が早い。

こう書くとなにか簡単な制作方法のように思えるけど、だからといってタイプビートが軽いものだとは限らない。なぜならたとえ既存のビートを参照するにせよ、実際にはただのコピーにならないよう“デザインする能力”が問われるからだ。編曲のサブカテゴリにあたるかもしれないが“既存の部品を弾き直して組み立て直す”ということが実際の作業で、弾き直す、という点以外はサンプリングと近しく、ヒップホップの文化圏で生まれて必然の技法といえるかもしれない。
言葉を重ねるようだけど、サンプリングもどの曲、どの部分をどうやって使いもう一度違う楽曲としてデザインするかは手腕が要る。人によっては10曲以上からサンプリングして再構築するビートメーカーもいる。どうしてただのコピーにしないかというと権利侵害を避ける意図や制作意欲、ラッパーが世に出したい楽曲の形態に関わってくるからだ。

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そのうえで、ヒップホップには先ほど用いた単語で“弾き直し”という行為がある。耳コピやネットに転がっているスコアを見て参照対象のビートで使われている(シンセサイザーを含む)楽器をなるべく同じものにして音色も統一し、コピーバンドのように再現して音源を手元にする行為がある。この形態で世に出しているビートメイカーやラッパーもいるけど、ヒップホップには“ビートジャック”という「ほかのラッパーが使っているビートを用いて自分流にアレンジしたラップを乗せる」という文化があるから成立しているのだと思う。権利侵害をすり抜けて制作意欲も保ちつつ世に出す違う形態だ。

さて、どうしてこれらを書いたかというと、全部踏まえてどのようにビートメイクのモチベーションを持とうか、というのが近ごろの自分なりの課題だからだ。ありがたくも制作依頼があり、タイプビートの依頼、弾き直しの依頼、オリジナルの依頼などが重なっていて、なおかつ個人的な制作もしたいという気持ちもあり意欲の管理に気を配っている。

タイプビート、オッケーSHINJI-coo-Kはそもそもミクスチュアロックバンドギタリストだったんだタイプをなぞりながら意外だけど馴染む別のタイプも一部に交えてその裏でドローンギターを弾こう。
弾き直し、オッケー長い楽器歴がどういう楽曲であれ1回聴けば耳コピできるように自分を変えたし多用されてたり有名だったりするシンセサイザープラグインは財布をさすりながら買いまくってる。
オリジナル、ちょっと一呼吸近ごろはラッパーとちゃんと話したり求めているものをきちっと探ったりしたい。

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ビートメイク、普段はあえて「制作」といっているけど「創造」したいという内から湧き上がってくるものがあり、それをどう表現するかに少しとまどっている。ビートメイクにおいて自分なりの創造を凝らすと、ヒップホップにならないんじゃないか、というおそれがある。

きっと創造したい欲求をそこら中に撒くようにいろんなビートに散りばめていけばいいんだろう、とも思っている。だけどオリジナルの制作依頼にはあまり自分の欲求を入れない方がいいのかもしれない、そうすると気持ちが入りすぎてすれ違う可能性があるから。

だから近ごろは依頼者となるべく話し合いたいし、なにより聞きたいのは「どういったビートを求めているか」より「どういったラップが好きか」の方だ。そのラッパーが求めるラッピングを宙空から、あるいは宙空へと求めていくことで、まだ聞こえていない音を想像して作る方が洗練されたビート、そのラッパーにこそ相応しい一点物のようなビートができるんじゃないか、教えてくれる好きなラップという刺激が自分の中のなにかを刺激するんじゃないか、などと思っている。


ただ、そう、これを書いている今は徹夜明けの昼下がりです。文章が冗長になっているときはいつも睡眠が足りていない。自分の立っている場所が不明になるんだろう、きっと。この記事を公開したらカーテンを開けよう、外はどうやら晴れているようだ。
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Author:SHINJI-coo-K(池田伸次)
videogame enthusiast and hip-hop beatmaker

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